世界中の農業生産の根本的な課題として、エネルギー損失の問題が存在しています。この損失のメカニズムは、光呼吸と呼ばれ、植物内でエネルギーを無駄にし、吸収しきれないCO₂(二酸化炭素)を放出する原因になっています。C3植物は、全植物種の約85%以上を占める主要な食糧源です。これらの植物は、RuBisCO(ルビスコ)酵素による誤った反応によってエネルギーを消費しています。この酵素は炭酸ガスではなく酸素を固定してしまいます。その結果、CO₂が放出されてエネルギーが失われてしまうのです。
このプロセスの変化を理解するためには、バイオロジー図が不可欠です。本記事では、簡単な図解を紹介します。テンプレートをウェブ上で編集したり、自分で図を書いたりできます。さらに、さまざまなデジタルツールで使えるオンラインテンプレートも利用可能です。
光呼吸とは?
光呼吸は、光合成時に緑色植物内で起こる反応です。植物は、太陽光・水・二酸化炭素を利用して栄養(エネルギー)を作り、成長します。この時、RuBisCO(リブロース-1,5-ビスリン酸カルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ)という酵素が重要な役割を持っています。
RuBisCOの酸素化反応
RuBisCOは、空気中の炭酸ガスを固定する働きで、食糧生産の第一段階を担います。ただし、このRuBisCOには弱点があります。炭酸ガスと酸素を明確に区別できず、時には酸素とも反応してしまいます。これが、科学者たちが「RuBisCO酸素化反応」と呼ぶ現象です。RuBisCOの酸素化によって光呼吸が始まります。特に暑くて乾燥した環境下で活発になります。暑い時期には、植物は水分を守るために気孔を閉じます。気孔が閉じると、葉内部のCO₂濃度が低下し、逆に酸素濃度が上昇。その結果、RuBisCOが酸素を使いやすくなります。
RuBisCOが酸素と反応すると、3炭素化合物の「3-PGA」(植物に有益)と、「ホスホグリコレート」(有害)が生成されます。有害なホスホグリコレートは栄養生成に役立たないため、植物は素早く分解・排除する必要があります。
この有害物質を分解・排除する過程で、植物はエネルギーを消費します。さらに、CO₂を外部に放出しつつ、ATPを消費し、グルコース(糖)が生成されません。結果として、光呼吸はエネルギー損失につながります。
また、光呼吸は光合成の速度を下げ、植物の成長や食糧生産量を減少させます。特に小麦・イネ・大麦・オート麦などC3植物で多く発生し、暑い地域ほど被害が深刻になります。
科学者の間では、光呼吸は「ムダな反応」と評価されています。エネルギーを浪費し、炭酸ガスを放出し、作物収量を減少させます。農家にとっても、光呼吸による食糧生産量の減少は重要な課題です。
光呼吸のしくみ
3オルガネラ・プロセス
光呼吸の経路には複数のステップがあります。細胞内部の3つのオルガネラ(細胞小器官)、葉緑体, 過酸化物質体(パーオキシソーム)、そしてミトコンドリアが関与するため、「3オルガネラ・プロセス」と呼ばれています。
この経路は葉緑体からスタートします。葉緑体でRuBisCOが酸素と反応し、有害化合物が生まれ、それがグリコレートに変換されてから細胞は過酸化物質体へ運びます。
過酸化物質体(パーオキシソーム)内部では、グリコレートがグリシンへ変換され、同時に過酸化水素(H₂O₂)が発生します。過酸化物質体に存在する酵素がこれを即座に分解し、細胞の損傷を防ぎます。
続いてグリシンはミトコンドリアへ移動。ミトコンドリア内で、グリシン2分子が結合し、セリンが生成され、この過程でCO₂とアンモニアが放出されます。固定された炭素と窒素が失われてしまうというわけです。
その後、セリンは再び過酸化物質体へ戻り、加工されてから葉緑体へ運ばれます。葉緑体でRuBPが再生成され、再度光合成で利用できます。
一部の物質はリサイクルされるものの、全体的なエネルギー損失は大きいです。光呼吸でATPを消費し、過去に取り込んだCO₂を手放してしまいます。
このエネルギー損失で光合成効率が低下し、植物の成長が遅くなり、葉の養分生成が減少。作物の収量もアップしません。特に暑い地域の農家には大きな悩みの一因です。
さらに光呼吸によって植物はストレスが増加し、乾燥した気候で弱くなります。この経路があるため、C3植物の多くは高温環境に強くありません。

C4・CAM型植物の適応
光呼吸を避ける植物たち
一部の植物は光呼吸を回避するための特別な適応を発達させています。代表例がC4植物とCAM植物です。これらの植物は暑く乾いた地域に生息し、RuBisCOの酸素化反応の影響を特別なメカニズムで抑えています。
C4植物(トウモロコシ、サトウキビ、ソルガムなど)は、まず葉肉細胞でCO₂を固定し、4炭素化合物「オキサロ酢酸」を作り、これが維管束鞘細胞へ移動します。
維管束鞘細胞内ではCO₂濃度が高くなり、RuBisCOが酸素と反応しにくくなることで光呼吸は大幅に低減。C4植物は効率よく栄養を作り、暑い気候下でも素早く成長します。
さらにC4植物は水分利用効率も高いです。気孔を部分的に閉じることで、水分損失と酸素流入を大幅に制限し、乾燥地域でも生き残れるよう工夫されています。
CAM植物(サボテン、パイナップル、アロエベラ等)は、夜間に気孔を開いて低温時にCO₂を取り込み、昼間は気孔を閉じて水分蒸発を抑えます。夜間に取り込んだCO₂は有機酸に保存します。
昼には保存したCO₂を葉内部で放出。RuBisCOがすぐに炭酸ガスを利用できます。
CAM植物はガス交換と光合成のタイミングを分離しているため、光呼吸を回避でき、水分・エネルギーの無駄も減少。砂漠などでも元気に育ちます。
C4植物・CAM植物双方の適応で光呼吸を大幅に抑制し、光合成効率を改善できます。そのため、厳しい環境下でも成長が良好です。

EdrawMaxで光呼吸の図を作る方法
EdrawMaxで光呼吸経路図を無料作成可能。生命科学関連のイラスト作成のための以下の機能がそろっています:
- 模式図用の無料テンプレート・記号素材・アイコン
- コネクターツール
- ドラッグ&ドロップ機能
- 既成のテンプレート
- 高解像度画像・ドキュメント・GIFなど様々な書き出しに対応
ここでは、簡単ステップで光呼吸経路図をゼロから描けます。
Step1 テンプレートを選択
- EdrawMaxを開き、ログインしましょう。その後、画面左側の『新規作成』ボタンをタップします。テンプレートセクションで、光合成や細胞構造など植物バイオ用の既成テンプレートを選択できます。
- 既存テンプレから選んでも良いし、白紙からオリジナル作成もOKです。

Step2 3オルガネラ経路の描画
- シンボルライブラリから基本図形やシンボルをドラッグし、キャンバスに配置します。ミトコンドリア(豆型)、葉緑体(楕円で内部小袋付)、過酸化物質体(小円)、それぞれの形を描きましょう。
- 三角形のワークフローになるように並べて、光呼吸の流れをつなげます。つながりループは矢印で表しましょう。
- 葉緑体→過酸化物質体
- 過酸化物質体→ミトコンドリア
- ミトコンドリア→過酸化物質体→葉緑体への逆戻り
CO₂・O₂のガス交換矢印も追加し、光呼吸のテキストボックスも置きましょう。

Step3 RuBisCOの反応経路の図示
- 葉緑体内にRubisCO酵素のテキストボックスを配置
- 二つの反応経路を矢印で描画。一つはCO₂でカルボキシ化、カルビン回路~糖生産経路としてラベル付け。これは植物に有益な反応です。
- もう一方は酸素化(O₂)の矢印、ムダな経路として表現。葉緑体から光呼吸の経路に流出する様子です。
- O₂・CO₂それぞれ違う色で描き分けましょう。

Step4 C3・C4・CAM型比較チャートを作成
Edrawの表ツールを使い、C3/C4/CAM植物がどう違うか比較チャート作れます。
C4/CAMが使う炭酸ガス濃縮メカニズム(CCM)のテキストボックス配置
光呼吸を最小化するカルボキシソームのテキストボックスも追加

Step5 詳細の追加
- EdrawMaxのテキストボックス&図形ツールで生物学情報を追加しましょう。
- 下記項目のテキストボックス配置・ラベリング:
- HCO₃⁻(重炭酸イオン)
- CO₂ポンプ
- カルボキシソーム:シアノバクテリア由来、CO₂を濃縮する
- ピレノイドCCM:藻類の葉緑体で見られる
- 環境要因(CO₂・水・光・温度・風など)
- C3作物のバイオ技術ゴール

作図が完了したら、書き出し(エクスポート)可能。保存形式も多数から選べます。たとえばGIF形式も使えます。
学生や先生もEdrawMaxで自由に生物学図解が作れて、友人などSNSですぐシェアOKです。

まとめ
光呼吸は生物学的プロセスであるとともに、世界の食糧生産に制約を与える要因です。なぜなら、光呼吸は植物の糖生産工程(カルビン回路)と競合するからです。EdrawMaxのような作図ツールを用いて図で視覚化することで、流れや重要ポイントがよりわかりやすくなります。