1. 日本飼育下のシャチ家系図
水族館で暮らすシャチたちにも、個体ごとの特徴や家族関係があります。その背景には、日本の水族館が積み重ねてきた飼育の経験と、シャチ本来の高い社会性があります。
1.1 日本初の飼育下三世:鴨川シーワールドの事例
日本のシャチ飼育史において、鴨川シーワールドは重要な役割を果たしてきました。1998年、日本で初めて飼育下繁殖に成功し、メスの「ラビー」が誕生します。 さらに2008年には、ラビーがオスの「アース」を出産し、日本初の飼育下三世が誕生しました。これは、長期的な飼育管理と繁殖技術の成果を示す象徴的な事例です。
1.2 シャチそれぞれの個性
- ラビー(長女): しっかり者で、お母さん的な存在。
- ララ(次女): 自由で冷静、観察力がある。
- ルーナ(ラビーの娘): 好奇心旺盛で遊び好き、大人になっても子供っぽい一面も。
- ステラ: 優雅で落ち着きがあり、ファンサービス旺盛な「お母さん」タイプ。
- ラン: 好奇心旺盛で遊び好き、ステージを乗り回すことも。
2. 日本におけるシャチ飼育の歴史
2.1 飼育開始と捕獲の時代
日本で初めてシャチが飼育されたのは1970年、鴨川シーワールドです。その後、水族館での展示需要が高まり、野生個体の捕獲が行われるようになりました。 記録によれば、1954年から1997年までに公式に捕獲されたシャチは1,178頭にのぼり、戦後から1960年代にかけては特に集中的な捕獲が行われたとされています。
2.2 1997年・太地町での捕獲をめぐる問題
1997年2月、和歌山県太地町でシャチの群れが湾内に追い込まれ、5頭が捕獲されました。捕獲個体は複数の水族館へ搬送されましたが、そのうち若いオスと妊娠していたとされるメスが、数か月以内に死亡しています。
この出来事は、追い込み漁の手法や、社会性の高い動物を家族単位で引き離すことの影響について、国内外で大きな議論を呼びました。
2.3 現在の状況
こうした経緯を経て、日本では現在、商業目的でのシャチ捕獲は認められていません(学術目的を除く)。 そのため、国内水族館におけるシャチの将来は、飼育下繁殖に大きく依存しています。ラビーやアースのような成功例は、今後のシャチ飼育を考える上で極めて重要な意味を持っています。
現在、日本国内でシャチを飼育・展示している水族館は、次の3施設です。
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鴨川シーワールド(千葉県)
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名古屋港水族館(愛知県)
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神戸須磨シーワールド(兵庫県)
このうち神戸須磨シーワールドは、2024年6月1日に開業した新しい施設で、西日本で唯一シャチを展示している水族館です。
3. 海外におけるシャチ飼育の動向
世界的にも、シャチ飼育をめぐる考え方は大きく変化しています。かつてはアイスランドなどが主要な捕獲地でしたが、近年は動物福祉の観点が重視されるようになりました。
象徴的な例が、アメリカのシーワールドによる2016年の発表です。同社はシャチの繁殖プログラムを終了し、将来的に飼育下個体数を増やさない方針を示しました。この決定は、社会的な議論の高まりを背景としたもので、世界的な潮流を示しています。
4.シャチに関するFAQs
①シャチの寿命は?
シャチの寿命は一般的にオスが50〜60年、メスが80〜90年とされていますが、飼育下ではこれより短い場合もあります。
②シャチの習性は?
シャチは母親を中心とした数頭~数十頭の母系家族(ポッド)で暮らしています。エコロケーションでコミュニケーションし、 群れごとに独自の「方言」のようなものを持つと見られています。自然界に天敵はいませんが、人間活動が脅威となります。