西洋文学の原点の一つとされる『オデュッセイア』は、『イリアス』と並んで古代ギリシア文学を代表する作品です。
トロイア戦争後、オデュッセウスが故郷イタケーを目指してさまよう10年の旅は、いまなお古典として読み継がれています。さらに、クリストファー・ノーラン監督による映画『The Odyssey』が2026年7月に公開予定とされており、あらためてこの物語への関心が高まっています。
本稿ではオデュッセウスの長い旅の流れを整理していきます。
1.オデュッセウスの長い旅の流れ
①イスマロス
トロイア戦争のあと、オデュッセウスたちはキコーン人の町イスマロスを襲います。しかし反撃を受け、多くの仲間を失いました。帰還の旅は、ここで早くも大きな犠牲を出すことになります。
②ロートパゴス族の島
この島では、ロートスの実を食べると故郷へ帰る気持ちを失ってしまいます。オデュッセウスは実を食べた仲間を無理に船へ戻し、そのまま出航しました。
③キュクロープスの島
独眼の巨人ポリュペーモスに洞窟へ閉じ込められ、仲間も食べられてしまいます。オデュッセウスは自分を「誰でもない」と名乗り、酒で相手を酔わせて目をつぶし、羊に隠れて脱出しました。ただし、逃げたあとに本名を名乗ったため、ポセイドンの怒りを招くことになります。
④アイオロスの島
風を支配するアイオロスは、帰国を助けるために不要な風を袋に封じて渡しました。ところが仲間たちがそれを財宝と勘違いして開けてしまい、船はふたたび流されます。再度助けを求めても、オデュッセウスは神に見放された者として援助を断られました。
⑤ライストリュゴネス族の国
ここでは巨人族の襲撃を受け、船団のほとんどが破壊されました。原作では、オデュッセウスの船だけが港の外側につないであったため、生き残ったと描かれています。
⑥キルケーの島
魔女キルケーは仲間を豚に変えますが、オデュッセウスはヘルメスから与えられた薬草に助けられ、彼女に対抗します。その後、キルケーは敵ではなく助言者となり、一行はこの島に一年ほど滞在しました。
⑦冥界
キルケーの助言に従い、オデュッセウスは死者の国へ向かいます。そこで預言者テイレシアスから帰還の条件を聞き、母や戦友たちの霊にも会います。この場面は、帰還の意味をあらためて自覚する重要な場面です。
⑧セイレーン
セイレーンの歌を聞けば破滅するとわかっていたため、仲間たちは耳を蝋でふさぎ、オデュッセウス自身はマストに縛られました。こうして歌を聞きながらも、船は無事に通過します。
⑨スキュラとカリュブディス
ここでは、巨大な渦カリュブディスと怪物スキュラの間を通らなければなりません。オデュッセウスは全滅を避けるため、やむを得ずスキュラの側を選び、仲間を失いながら通り抜けました。
⑩トリーナキエー島
この島では、太陽神ヘーリオスの聖なる牛に手を出してはならないと警告されていました。しかし、飢えた仲間たちが禁を破って牛を食べてしまいます。その結果、ゼウスの雷によって船は破壊され、仲間は全滅しました。
⑪カリュプソーの島
ただ一人生き残ったオデュッセウスは、女神カリュプソーの島に流れ着きます。彼女はオデュッセウスを引き留め、長く島にとどまらせました。原作ではこの期間は7年です。最終的には神々の決定により、オデュッセウスは島を離れることを許されます。
⑫パイアーケス人の国
島を出たあとも難破しますが、オデュッセウスはパイアーケス人の国に助けられます。王宮で自らの遍歴を語り、その助けを得て、ついにイタケーへ送り届けられました。
⑬イタケー帰還
故郷に戻ったあとも、すぐに平穏は戻りません。妻ペーネロペーに求婚する男たちが宮殿を占拠し、息子テーレマコスの命まで狙っていました。オデュッセウスはアテーナーの助けで老いた乞食に変装し、味方を見極めながら機会を待ちます。
⑭弓の競技と求婚者たちの殺害
ペーネロペーは、オデュッセウスの弓を引き、斧の穴を射抜ける者と再婚すると告げます。誰にもできなかったその競技を、変装したオデュッセウスが成功させ、正体を明かします。そしてテーレマコスらとともに求婚者たちを討ち、ようやく家と王国の秩序を取り戻しました。
参考資料:『オデュッセウス WIKI』
2.『オデュッセイア』に関するよくある質問
①なぜ帰還に10年もかかったのか
原作では、最大の理由はポセイドンの怒りです。とくにポリュペーモスを傷つけたことが、その後の苦難につながります。また、仲間たちの判断ミスや禁忌の違反も、帰還を遠ざける大きな原因でした。
②オデュッセウスの強さとは何か
彼の最大の武器は、力よりも知恵です。「誰でもない」と名乗る場面や、帰還後に乞食へ変装する場面に、その特徴がよく表れています。『オデュッセイア』では、勇敢さだけでなく、状況を見て考える力が重要な資質として描かれています。
③『オデュッセイア』は何回、映像作品化されているか。
代表的な映像化作品としては、1954年の映画『Ulysses』、1968年のテレビ版『Odissea』、1997年のミニシリーズ『The Odyssey』などがよく挙げられます。近年では、クリストファー・ノーラン監督による新作映画『The Odyssey』が2026年7月17日公開予定と報じられており、あらためて注目が集まっています。
④『オデュッセイア』は後世の文学にどのような影響を与えたか。
「長い帰還の旅」「故郷への執着」「誘惑と試練」「変装と自己証明」といった主題は、後世の文学と映像に繰り返し受け継がれてきました。