1.エレベーター図面は何に使われる?
エレベーター図面は、設計から施工、メンテナンスに至るまで多目的に使われます。図面に表記された情報をもとに、工事や修理が行われるため非常に重要なものです。
建築設計時には、建築主の要望を満たしているかの確認に使われます。エレベーターの設置位置や昇降路の寸法、出入口の位置などや建築構造物と整合性も確認しましょう。
施工段階では施工図として使用され、躯体工事・据付工事・電気配線工事などの職人に詳細な内容を正確に伝える役割を果たします。施工後は保守点検の資料としても利用され、故障や劣化箇所の特定、部品交換の際の参考資料となるものです。
また、エレベーターの設置時、改修工事で建築確認申請や昇降機設置届けなど、各種の行政手続きの提出書類としても使われます。提出する図面としては、配置図、各階平面図、構造詳細図などです。
2.エレベーター図面の主な種類
エレベーター図面には、平面図、断面図、電気系統図があり、BIM/3Dモデルを活用した管理も行われています。それぞれを確認しましょう。
平面図(設置位置・昇降路のサイズ)
エレベーターの平面図は、建物内のエレベーター設置位置や、昇降路のサイズ、形状を真上から見た視点で示した図面です。レイアウト計画や施工時の基準となる資料として使用されます。
断面図(昇降スペースの高さ・機械室有無)
エレベーターの断面図は、昇降スペースの高さや構造を縦方向に示した図面です。機械室の有無や各階との位置関係が分かります。
電気系統図(制御盤や配線の位置)
エレベーターの電気系統図とは、制御盤を中心に各装置との接続や動作を示した図面です。配線の位置や接続先が明確に記され、保守や点検に不可欠な資料です。
BIM/3D図面の活用
エレベーターにおけるBIM/3D図面は、設計から施工、維持管理までの全工程で情報の活用に利用されます。3次元モデルに、コストや仕上げ、管理情報などを追加して運用します。
参考資料: https://www.fujitec.co.jp/products/new_construction/emergency/installation
3.図面を見るときのチェックポイント
ポイント①寸法(昇降路、出入口、かごサイズなど)
エレベーターの寸法は、設置の可否や使い勝手を左右する重要な項目です。昇降路のサイズは、建物の構造に直結します。かごサイズと出入口の有効開口幅は、利用者の快適性に影響がでます。図面で使いやすさ、安全性、法令適合性等を満たしているかの確認と評価をしてください。
ポイント②荷重・定員・昇降速度など仕様情報
エレベーターの仕様は、安全性と運用効率に影響します。例えば、定格荷重は最大何kgまで載せられるかとういう基準、定員は最大利用者数です。昇降速度は、建物の階数や用途によって決まります。一般のマンションでは中速の毎分60m、15階以上の高層ビルでは高速の毎分120m以上が採用されます。人用、寝台用、荷物用などの用途によって仕様が変わるため、図面での確認が必要です。
ポイント③法規制・バリアフリーへの対応状況
エレベーターは、建築基準法、労働安全衛生法、消防法などの各種法令の規定を満たす必要があります。例えば建築基準法では、一定規模以上の建物では非常用エレベーターの設置義務や、昇降路の耐火構造などが求められます。建築物によっては、バリアフリー法に基づく設計も求められるケースがあるので、図面に反映されているか事前に確認しましょう。
基準:https://www.mitsubishielectric.co.jp/elevator/planning/regulation/pdf/5-3.pdf
4.エレベーター図面の入手方法
エレベーターの設計や改修工事の際は、正確な図面の入手が不可欠です。エレベーター図面の入手方法は、立場や目的によって異なります。
建物の設計者や施工関係者であれば、エレベーターメーカーに問い合わせることで、参考図面(平面図・断面図)などを提供してもらうことで入手できます。実施設計の段階では、メーカーから据付図や詳細図などの施工用図面が提供されるので、各工事との調整に活用してください。
建物の管理者やオーナーであれば、施工図や設計図書にエレベーター図面が含まれていることが多く、まずは過去の資料の確認をしましょう。メーカーに直接依頼することも可能ですが、所有者であることの証明や使用目的の提示が必要です。
情報収集が目的の場合は、各メーカーの公式サイトでPDFやCADデータのダウンロードが可能です。メーカーによっては、BIM対応の3Dデータもダウンロードができるため、設計検討の初期段階でも役立ちます。
エレベータ図面は、メーカーの知的財産であり、無断入手や利用は制限されます。図面には機密情報が含まれるため、正当な理由や立場がないと提供されないことがあります。目的を明確にして、適切な手続きを経て入手することが重要です。
5.自分でエレベーター図面を描く方法
Step 1:必要な情報を収集する
平面図で、フロアにおけるエレベーターの位置の確認をします。エレベーターメーカーのサイトの寸法表等から、定員数・最大積載量等目的にあったタイプのエレベーターを選択してください。
今回のエレベーター情報は下記の通りです。
- 定員17名
- 最大積載量1150kg
- 速度60m/min
- 昇降路内寸法2400×2250
- かご内寸法1800×1500
- 出入口有効幅1000
Step 2:作図ツールを準備する
作図ツールとしては、エクセルを使う方法があります。しかし、エクセルは、図形を配置だけなので、各パーツにサイズを持たせることができません。また、設備等のシンボルは、四角や丸などの図形を組み合わせる必要があります。
EdrawMaxは、たくさんの図形パーツが登録されています。目的に合ったパーツを平面図に配置するだけで、簡単に平面図を書くことが可能です。
Step 3:昇降路と機器のレイアウトを描く
EdrawMaxを使って平面図を作成する手順を解説します。
- 「図形」―「壁芯と床面積」―「部屋」を選択します。
- 壁の図形を左クリックし、「壁」を選択して壁の厚みを入力します。
この時に「すべての壁に適用」にチェックを入れます。
- 再び壁をクリックして、「サイズ」を選択します。
昇降路の内寸法+壁の寸法を入力します。
- 壁をドラッグして、縦横の壁が重なり合う位置に配置します。
位置に確定すると、壁が一体化されます。
- 4辺の壁を整えて、昇降路の完成です。
- 「図形」の一番下の「形状設定」をクリックして、「図形ライブラリ」を表示します。
- 「間取り」―「建築基準」を選択し、ライブラリに追加します。
- 「図形」―「建築基準」―「エレベーター」を選択します。
- エレベーターの図形を左クリックし、「サイズ」を選択します。
WとH寸法に、かご寸法を入力します。
- エレベーターの図形をクリックし、回転矢印をドラッグして配置したい角度に回転させます。
- 先ほど作成した昇降路の真ん中にかごを配置します。
- 「図形」―「壁芯と床面積」―「外壁」で壁を追加します。
追加した壁を左クリックして、「塗りつぶし」で白を選択します。
さらに左クリックで「線」を選択して、「線なし」にします。
- 「サイズ」で出入口サイズを入力します。
- エレベーターの入り口に配置をします。
Step 4:注記・寸法・仕様を記載する
- 「図形」―「寸法と工学系」―「水平基線」、「垂直基線」を追加します。
- 昇降路の壁内寸に寸法線を合わせて、③で入力した昇降路の内寸法になっているかを確認してください。
- 同様に出入口寸法を表記します。
- 「その他」―「表」で表を追加します。
必要な仕様情報を表に追加します。